人形劇三国志 〜 膏肓 koukou

Posted by gkd on 23 1月 2008 | Tagged as: 閑話休題

店頭にはよく営業の人が訪れる。誠に失礼ながら、ほとんどが門前払い。ある時、投資関係の会社の営業で入ってきたのは若い女性で、上手く?一蹴を免れたところへ、中国語が話せるというので、一言二言、試しに話しかけてみるとこれは間違いない。 話が三国志になり、その彼女に三国志の中で一番好きな人物は誰かと問うた。 彼女のこたえは即座に「呂布」・・・  うーむ、なんと・・ しばし絶句した。 これをスターウォーズに置き換えるなら、「ダースモール」だ!

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人形劇三国志は随分と前にNHKで放映されたもの。 人形劇といってバカにしてはいけない。時代劇専門チャンネルで再放送され、今日が最終回だった。 壮大な舞台、覇道、王道を目指した天下の英雄の大絵巻。名馬にまたがり中原を駆け抜けるワクワクする感覚、手に汗握る一騎打ち、思わぬ非業の最期には涙し、全編を通して大きな感動を覚えた。

人形劇三国志もいよいよ最終回、出師の表は諸葛亮が帝にあてた名文として知られる。自分の命もあと幾ばくか、、先帝の遺志を継ぐべく命がけの戦にあって、心のそこからの忠誠心がほとばしる。 今日の最終回は五丈原での出師の表を、帝自らが音読する感動の場面がある。正に名文と聞き入っていたが、、、その中に、「病膏肓に入り」のくだりで、なんとNHKとしたことが、これを「こうもう」と読んでしまった。せっかくの名文を読み間違えてしまうとは孔明先生に対してチョット合わす顔がない・・・ 読み間違いも世間に広まればまた慣習となるので、許されることもあるが、膏肓に関してはそれにあたらない。ちなみに消耗は しょうこう らしいが、しょうもう というふうに誰でも読んでいる。

膏肓(こうこう)は鍼灸のツボの名前。 肩胛骨のあたりにあって、この部位に病が入ると、針もとどかず、もはや毒を追い出すこともかなわないという場所で、不治の病となる。「病膏肓に入る」は 転じて、物事がどうにもならないことに対して失望の念を表現することも出来る。

その後、ネットで調べてみると、DVDで全68話が販売されているようだ。また人形の総監督である川本喜八郎氏の記念館なども最近長野県にできたというから、今度の夏あたり、ツーリングで是非訪れてみたいと思う。 あらゆるサイトでの絶賛のごとく、三国志という古典をどれほどまでに忠実に再現しまた、独自の世界を表現できるか、人形劇三国志は全く独立したひとつの三国志を確立したと言えると思う。 日本人の三国志観は吉川栄治氏の三国志がスタンダードになっている。専門家ではないのでこのあたりの考証は省くが、曹操の人物像などは本場の中国とはかなり違っているかもしれない。

最初の話に戻るが、自分としては、ベストキャラクターを選ぶなら迷わず張飛だ!恐れを知らぬ豪傑であり、好戦的でありながら時に思慮深さも持っている。庶民出身ということで、酒飲みで粗暴なところは残念ながら最後まで治らない。直情型の頑固者でありながら素直に謝ることも知っていて、頭の上がらない妻もいる。一瞬とぼけたところがまたオチの好きな大阪人としては非常に好感度が高い! まさに剛柔、緩急、清濁ともに兼ね備えた奇傑。馬超を筆頭に一騎打ちに最大の見せ場を作り、一度として負けたことがない。実は長年、趙雲のファンだったが、今の年齢になってみると、張飛の人間臭さのほうに惹かれる。ただ、趙雲に花を持たせるとしたら、借りにこの二人が一騎打ちをすると、力負けはするものの、技に勝る趙雲が勝つと思う。

最後にクイズ、三国志における五虎大将軍とはだれか、5人挙げよ・・・ 最初の三人は簡単だが、あとの二人がちょっと難しい。最近は歴史などに対して興味がない高校生でもこのクイズに簡単に正解できる。なぜか、、それはゲーム。「信長の野望」に始まる国とり合戦ゲームがいまも受け継がれて、この中原の争いを、日本の若者は知り尽くしている。信長の野望以来やっていないので想像になるが、このゲーム、作者の腹一つだが、おそらく呂布にはとてつもない攻撃力のパラメーターが設定されているに違いない。もちろん劉備には最高クラスの人望が与えられているはずだ。

半夏 ハンゲ

Posted by gkd on 02 7月 2007 | Tagged as: 漢方薬の話

大学に入学したとき、新入生歓迎コンパ、略して新歓コンパで「イッキ」が流行っていた。 歓迎とは名ばかりで、実際にはつぶれるまで(リバースするまで?)可愛がってもらえる儀式。 酒が飲めない人間にはなかなかの修行だった。

新人を歓迎するという儀式はどの世界にもあるようで、漢方に入門したころにもあった。意地悪な先輩が居ると、自分が昔やられたことをそのままお返しするチャンスを待っている! 百味ダンスを前に、最初はナツメなんかをかじらせて、どうだ美味しいだろう。などどいって喜ばせる。 次にはブシなんかを実に慎重になめさせて、舌のしびれるのを教えて、満悦な気分になる。

最後に、じゃあこれをかじってみなさいと言われて、半夏をかじらされる。小心者でチョットしかかじらないときはもっとちゃんとやらんかい!というが、大胆な新人がボリボリやると、おいおいそのヘンにしておけとやめさせる・・・

ハンゲは吐き気をとめたり、痰を出す作用のある健胃作用を持った漢方薬。諸方に用いられて大変有効かつ重要な生薬。 だが、これをかじるとひどいことになる。舌が動かなくなる感じがして、声がかれてしまう。しまいには声が全く出なくなってしまう!新人はアウアウいいながら真剣に助けを求めるが、場はみんなの笑いもの。実に残酷な儀式だ。 素人衆は絶対にマネをしないように! これを治すにはやはりハンゲを用いる。これに生姜を入れたものを小半夏湯と言い、煎じて飲ます。

 今日は半夏生。カラスビシャクはこの時期、梅雨の真っ最中に異様ないでたちで登場し、とてもそれが花と思えない。その根っこにはビ−ダマみたいなコロコロしたものがついていて、これが半夏。生薬を扱う漢方薬局であれば半夏を触らない日は1日もないが、今度の半夏は小さいな、、、などと気にしつつも、これをかじらされた思い出はどんどん遠くなって行くばかりだ。

salyu  凍てつく心を暖めてくれる

Posted by gkd on 19 2月 2007 | Tagged as: 閑話休題, その他

以前からケーブルテレビのJpopで印象に残るビデオクリップは残してあります。あまり日本語の曲は聴かなかったのですが、ヴィジュアルとのセットだとメッセージが伝わりやすい。また日本語の進歩?といいますか、耳だけでは何を歌ってるのか皆目分からないが、歌詞を字幕でつけてくれるのもわかりやすい。

suisei.JPG2005年の夏頃のクリップで「彗星」を歌うかわいいOLの女の子がいて、時々繰り返して楽しんでいました。職場での情景をミュージカルにするという手法は、ビョークの「ダンサーインザダーク」にも通じます。ずっと何気なく気にしていたのですが、1年半もたってようやくCDが欲しくなったので二枚買いました。実は私はめったにCDを買う人間ではなかったりします。

CDの説明をみると、takeshi kobayashi という人が全曲を手がけているということがわかりました。有名な方のようですが昨日まで知りませんでした・・・ ともかく、salyuのシンガーとしての世界が心地よいので車の中や休憩の時なんかに浸っています。

それまで「さりゅう」というのは 蓑笠の翁(さりゅうのおう)という言葉でしか自分の中では存在しませんでした。以下は縦書きの漢詩です。詳しくは漢詩のページで。

独  孤  万  千

釣  舟  径  山      江

寒  蓑  人  鳥  柳

江  笠  蹤  飛  宗  雪

雪  翁  滅  絶  元

柳宗元のこの漢詩は、美しい冬の情景故に、寒さと孤独が際だっています。salyuの歌声は凍てつく心を温める癒しの効があるような気がします。今後の彼女の活躍に期待したいですね。

父母恩重経  bumoonjukyo

Posted by gkd on 14 2月 2007 | Tagged as: 閑話休題, その他

風樹の嘆。失ったときにはじめて分かることがある。健康もそう、ごく普通で、何の感動もなかった毎日が、実は光り輝くほどの意味を持っていた・・・病気になれば皆そう思って、いまさら失ったものの大きさを知ることになります。

父母恩重経は昭和60年頃に漢方の勉強会の教材として知りました。如是我聞から始まるのは、いまから釈尊の言葉をそのままにお前らに伝えるから、耳かっぽじってよく聞けよ!というおきまりの号令のようなものです。

今時はGOOGLEがあるので、原本はググってください。この書斎はブログであることを考えて長文を避けます。仏典やお経といえば信者が真剣に学んだり、僧侶が一生をかけて読むもので、その深意は計りがたく、仏智をもって成仏へと導く教えです。

この父母恩重経も釈尊のお経ですが、現代語訳もあり、読みやすく感動的です。一説には各宗門の聖典となっている真経と区別して偽経とも解釈されていますが、一般人がこれを読む際には関係のないことで、一字一句が尊い教えです。

父母に十種の恩徳あり

懐胎守護の恩   10ヶ月の間、自分の身を削って育んでくれた
臨産受苦の恩   命がけの出産でぼろぼろになってしまった
生子忘憂の恩   それまでの苦しみを産声を聞いて忘れる
乳哺養育の恩   美しかったあなたの顔は苦労でしわくちゃに
廻乾就湿の恩   子に乾いた場所を、自分は湿った所に
洗灌不浄の恩   嫌がることもなく、おむつを替えてくれました
嚥苦吐甘の恩   苦いものを除き、甘いものを与えてくれました
為造悪業の恩   子のためなら、悪業を為すことも恐れませんでした
遠行憶念の恩   子が帰るまで、一晩中でも心配し続けました
究竟憐愍の恩   子の代わりに苦しみ、死しても子を守りたいと願う

無条件で親孝行をしろなどとは言ってませんね。世の中立派な親だけではありませんから。出来の悪い親にはどう向き合うか・・・そんな答えもこの経典には書かれています。

生前、親父がよく言っていた言葉は「10人の子は養えども、一人の親は養い難し」です。また「ばかを見たけりゃ、親を見よ」とも。子煩悩で真面目、働き者の父親でした。

大長今 チャングムの誓い

Posted by gkd on 14 2月 2007 | Tagged as: 閑話休題, 漢方薬の話

このドラマを年末、総集編でみました。普段からテレビというモノはほとんど見ないので、ましてや連続ものはご縁がありません。 ただ、よくお客さんなどから、漢方のドラマ?あれ、おもしろいね〜 とかいわれて、、あ、そうですね・・などとごまかしていたこともあって、興味はありました。

大長今 チャングムの誓い・・それにしてもなんとこのストーリーは悲惨な殺しやイジメの連続でしょう!それに耐え抜くヒロインを見て、昔の「細腕繁盛記」の加代を思い出しました。こういう筋書きは、悪役が憎たらしいほど盛り上がるものです。異様なほどに感情移入して応援してしまいます。

霊芝さて、本題の漢方の部分ですが、非常に伝統的な学問として登場しています。そして仁術たる精神論も緊張感を高めます。病邪に向かう真剣勝負は見応え十分ですね。時代背景として、診察は脈診が中心です。場合によっては肘までめくり上げる、尺診というみかたもあります。脈診の発達には、医師だからといって無条件で裸にならない韓国や中国で、見えている部分でなんとか診察する、ということが根底にあります。日本人は、裸になることが抵抗のない民族?ですので、腹診が発達しました。

話の中で、薬草同士の禁忌(不適合)を見つける場面があり、それは人参とニクズクという設定でした。これについての文献的な考証がされているのかどうかは不明ですが、漢方界の重鎮である寺澤捷年先生が監修なさっているので間違いはないでしょう。 この場面を見て、あ、自分の飲んでいる漢方薬は大丈夫? などと心配した人もいるかもしれませんが、まずこの組み合わせは臨床上で発生しませんので安心して下さい。ただ、「中国漢方」を全面に出しているところでは時にはニクズクも使うようですね。

女性が王の主治医になるというのは、当時としては大変なことでしょうが、それについては史実なのですね。しかし、実際はもっと年月がかかったのではないでしょうか。三国志に出てくる華陀なども、いくら名医になる人でも臨床経験を経て上達するものですから、漢方にも王道はないはずですね。過去記事の漢方スクールでもかきましたが、薬と鍼灸を統合している点は見逃してはなりません。本来の漢方治療は薬と鍼灸は区別していません。

衆医恐れるなか、チャングムが王の顔面に針を刺す場面がありましたが、あれは経絡上は何も怖いことはないですね。おそれるとしたら、眼窩の内出血でしょうか。命に別状はなくても、王の目の回りにクマを作れば命はないものと思われます。

総集編で5時間、一気にみてしまいました!涙、涙の物語。 特に王が野いちごの甘露煮について問い、チャングムが母への思いを語る場面はこの壮大なストーリーのなかでも最も感動的。 臥薪嘗胆、捲土重来、倦むことのない鉄石心のヒロインです。

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